非認知能力をはぐくむ環境とは

非認知能力
むずかしい言葉ですよね。

 

でも次の言葉に触れると自然体であることにきづきます。

非認知能力は、読み書き計算のように
教えて身に付くものでもない。環境の賜物なのだ

 

 

引用したのは、
Helping Children Succeed
私たちは子供に何ができるのか
非認知能力をはぐくみ、格差に挑む
(ポールタフ著)
より。

またこうも言います。

子供たちのやりぬく力や
レジリエンスや自制心を高めたいと思うなら、
最初に働きかけるべき場所は、子供自身ではない。
環境なのである。

 

なるほど。
食材とキッチンと食卓。
非認知能力をはぐくむ食事環境。
これはあるだろうなあ。

名著をとおして新たな出合いに感謝いたします。
以下、自分たちのメモ様ですが、ご興味あればどうぞ。

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非認知能力の大切さと、それを奪うもの

近年、教育分野では「非認知能力」の育成に高い関心が集まっている。
子どもがより良い人生を歩む上で、
これまで重視されてきたIQや学力等の
「認知能力」よりも影響力が大きいことが、
明らかになりつつあるからだ。

 

非認知能力とは、1つのことに粘り強く取り組む力や、
内発的に物事に取り組もうとする意欲などを指す。

 

心のOS(オペレーティングシステム)
と言っても良いかもしれない。

 

ノーベル経済学賞受賞のヘックマンが研究した
「ベリープロジェクト」が有名だが、
就学前に良質な保育、教育を受けた子供は、成人後に
高校卒業率が高く、犯罪率が低く、生活保護率が低く、年収が高かった。

 

つまり、子供の基本、特に就学前に適した環境と関わりを持つことが、
子供たちの日にち能力の育成、
ひいてはその後の人生に決定的に重要な意味を持つものだ。

 

非認知能力に焦点を当てた早期教育の、
子供一人当たりの投資対効果
納税額の増加や犯罪コストの低下
は13倍と言うデータもある。
非常に高い効果を生むことがわかるだろう。

・・・・・・・・・・・・・・・インフォグラフ

 

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世界各国でおこなわれた貧困問題の意識調査で興味深いデータがある。
「自分で生きていけないような
とても貧しい人たちの面倒をみるのは、国や政府の責任である。」
この考えについてどう思うか?という問いに対し

 

「そう思わない」と答えた人は、
中国ではわずか9%、イギリスでは8%ドイツでは7%の人だけだった。

 

つまり、これらの国々ではその人が貧しい人の支援を政府が行うべき、
と考えていることがわかる。

 

しかし日本では「そう思わない」と答えた人が38%。
諸外国の5倍近く。アメリカですら28%だというのに。

 

貧困に冷たい我が国は、
貧困は自己責任だとつきはなし
そして結果として、自己責任なんて持ちようがない子供たちの間に
貧困が広がることを、放置してしまった。

 

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アメリカの公立学校において低所得層の生徒が増えてきている
2010年代50%を超えた

 

 

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「非認知能力を教えることのできるスキルである」
と考えるよりも
「非認知能力は子供をとりまく環境の産物である」
と考えた方がより正確であり、有益でもある。

 

子供たちのやりぬく力や
レジリエンスや自制心を高めたいと思うなら、
最初に働きかけるべき場所は、子供自身ではない。
環境なのである。

 

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ごく幼い時期の子供の脳は最も柔らかく、
他のどの時期よりも環境からの影響受けやすい。
のちに様々な能力を支えることになる神経系の基盤が形成の途上にあるからだ。
この基盤が関わる能力には、
読み書き計算や比較、推測を扱う知的能力だけでなく、
学校の内外で生きていくための心の習慣や力、物の見方まで含まれる。
幼いころに環境から受けた影響は増幅される。
良い環境にいれば先々の発達にとって非常に良く、悪い環境にいれば非常に悪い影響が出る
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1950年代にイギリス、カナダ、アメリカの研究者が発見したところによれば、
生まれて最初の12ヶ月後に温かく気配りの行き届いた子育てを経験した子供は、
多くが親と強い結びつきを形成する。
研究者たちはこれを「安定したアタッチメント」と名付けた。
この結びつきによって、子供の心に安心感と自信が深く根付く。
心理学の用語で言う「心の安全基地」ができるのだ。
これがあると、成長したときに自力で思いきって世の中の探検へと乗り出していけるようになる
そうした自信と自立は、現実の世界で役に立つ。
1970年代にミネソタ大学で始まった長期にわたる研究によれば、
1歳の時点で母親との間に安定したアタッチメントが見られた子供たちは、
幼稚園では注意深く、物事に集中することができ、
ミドル・スクールでは好奇心とレジリエンスを示し、
高校中退することなく卒業する確率が著しく高かった。
59ページ
間違いを批判するよりも、うまくいった点に言及することで、
よい子育てに難しい理屈はいらないのだと強調していた。

 

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外発的動機付けが重要になる

 

外発的動機付けを自分のうちに取り込むようにうまく仕向けられた子供は、
モチベーションを徐々に強化していけるという。

 

ここで心理学者は、
人が求める3つの項目に立ち戻る。
「自律性」
「有能性」
「関係性」
である。

この3つを促進する環境を教師が作り出せれば、
生徒のモチベーションがぐっと上がると言うわけだ。

生徒たちが教室で
「自律性」を実感するのは、
教師が、「生徒に自分で学んで、
自分の意思でやってるんだと言う実感を最大限に持たせ」
管理、強制されていると感じさせないときである。

さらに、生徒が
「有能感」を感じるのは、教師に好感を持たれ、価値を認められ、
尊重されていると感じる時である。

 

生徒のモチベーションを高めたいと思うなら教室の環境や生徒との関係を調整し、
この3つの感覚を強化する必要がある

 

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大事なのは暖かい、正面から向き合ってやりとりだとわかっているからだ。
そうしたアプローチはどんなふうに実行されようと、
子供たちに深い、何よりも大事なメッセージを伝える。

帰属意識、安全、安定についてのメッセージ、
世界の中での自分の居場所についてのメッセージだ。

 

こうした認識は
曖昧で感傷的にさえ見えるかもしれないが
乳幼児の脳の中ではシナプスの形成、樹状突起の剪定、
DNAのメチル化などの神経化学反応として、はっきりとした形で劣る。

 

これら全てが、直接的であれ間接的であれ
この先の学校での成功に貢献する。

 

こうしたメッセージは、
実際人の脳には10ヶ月の乳児の脳に起こるほどの
影響は与えないかもしれないが、
それでも生徒の心理に、行動に、深く響く。

子供たちが学校への帰属意識を持てれば
自分たちの成功信じてくれる大人、
思いやりと敬意を込めて関心を向けてくれる大人から正しいメッセージを受け取るべきだ。

 

彼らは教室に欠かさず来るようになり、難しい作業にも粘り強く取り組み、
学校生活の中で数え切れないほど起こる小さな挫折や不満から素早く立ち直れるようになる。

幼少期の子育てにおける親の敏感な反応によって、
子供の頭の中に知的な物事を取得するための措置が作り出せるのと同じように、
学校では教師からの正しいメッセージが、生徒の頭の中にさらに進んだ、
手強い学業に取り組むための措置を作り出すのだ。

 

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粘り強い行動が、教師が望む
(そして生徒と社会一般が望む)
学業の成績を頼む助けになるのである。

では、生徒に粘り強く行動させるにはどうしたらいいのか?
ファリントンが調査から引き出した結論によれば、
「学業のための粘り強さ」の背後にあるカギは
「学業のためのマインドセット(心のありよう)」
つまり子供たちそれぞれの姿勢や自己認識である。

 

ファリントンは生徒のマインドセットに関する大量の研究から、カギとなる4つの信念を抽出した。
生徒たちの教室でのがんばりに最も大きく貢献する信念である。
1)私はこの学校に所属している
2)私の能力は努力によって伸びる
3)私はこれを成功させることができる
4)この勉強は私にとって価値がある

 

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この教師が勉強のやり方を批判してくるのは、
改善の手助けをしてくれようとしているからなのか、
それともこちらに対する敬意がないからなのか?

この教師は味方なのか、敵なのか?
恵まれた環境で育ってきた生徒は、この疑問に
そもそもこの手の疑問が頭に浮かんだとして
たいていは軽く肩をすくめ、こう思うだけだろう。

 

教師にどう思われようと、
気にすることなんかないじゃないか。

 

しかしずっと不利な状況に置かれてきた生徒にとっては、
特に幼少期の逆境によって
ストレス反応システムの発達が不十分な子供たちの場合には、
この疑問が差し迫った、極めて重要なものに感じられ、学校生活に多大な影響及ぼす。