爆笑問題の太田光氏と
ベストセラー「バカの壁」の著者養老孟司氏の共作
「人生の疑問に答えます」を読みました。
当コラムで以前「子育て4訓」を紹介しましたが、
ずばり同じことを養老先生のお母様が語られていてビックリ。
子育て中の方、教育関係者の方に参考になれば幸いです。
よろしければ、あわせてご覧ください。
子供の教育に熱心になりすぎてしまう私
上の子は8歳、下の子は5歳、私にとって、この2人の子供がすべての毎日です。
あらゆる育児書を読み、暇さえあればインターネットで受験や子育ての情報を検索しています。脳は3歳までに作られると聞き、2人が赤ん坊のときには頭が良くなると言う玩具で遊ばせました。
幼稚園に入ってからは算数や国語のドリルを解かせて、つきっきりで勉強をみています。育児書によると体を動かすことも脳の発達を促すというので、最近はスポーツや昆虫採集にも積極的に取り組ませています。
今は2人ともおとなしく勉強していますが、怠けるのが心配で目が離せません。どうしてこんなに勉強させるのかというと、
それはズバリ、いい大学に入れるためです。
いい学校に行けば友達に恵まれるし、
物事を深く考えられるようになると思うのです。就職が有利になります。
そして、それは充実した人生を送るために役立つはずです。しかしあまりに多くのことをしつけると、
いびつな人間に育ってしまうのでは、という心配もあります。
とはいっても、これまで一生懸命やってきただけに、
ここまで続けてきたことを今更やめるのも不安を感じてしまいます。
今日もまた子供のために、より良い教育方を探し続けています。このまま突っ走ることが子供にとって本当に良いのでしょうか。
心をかけても手をかけない
これの答えは「心をかけても手はかけない」ということです。
実はこれは僕の意見ではなく、うちの母親が言ったものなんですよ。母は開業医だったので、忙しくて全然息子の面倒をみなかったです。
大体、ご飯を作ったことのない人でしたからね。
そんな母がぽつんと言ったのは、
この「心をかけても手をかけない」という言葉だったんですね。これは忙しい母親からすると多分に言い訳が含まれていたのでしょうが、
子供からするとこれは非常にありがたいことでした。
母が本当に自分のことを考えてくれているという、
どこかで安心することができたんですよ。忙しいから育児に手をかけられない。
でも、いつも心にかけていれば、
それだけで子供にとって充分じゃないかと僕は思うんです。
うちの母の話をしますと、医師という仕事もあったため、
忙しくて食事なんて作ってくれることありませんでした。だから、食事は看護婦さんやお手伝いさんがいてくれたので
必ず彼女たちが用意してくれていました。
もちろん学校の授業参観や運動会なんか来るわけがない。でも、僕には寂しいとか、そういうものはありませんでした。
それは、僕自身も母親が何をやってるのかわかっていましたからね。そんな母に育てられましたから、この人の話を聞いていると、
これは手をかけすぎたと感じます。
ここまでやると、子供にとって迷惑と言うこともあるわけでね。
ただ、こういう熱心なというか、
手をかけすぎているお母さんは周りはあまり非難できない。
何しろ子供のためにと、
それこそ人生かけてやっているみたいなところがあるわけですから。前回の家族の話と同じになってしまいますが、
やっぱりある程度、今の世の中では自分を持たないといけません。
今の調子で子供のためだと、自分を犠牲にして一生懸命に手をかけ、
子供がある程度大きくなったときに、
迷惑だったと言われたらどうするんでしょうかね。
だから、子育てをするのと同時に、
社会的な活動もしなきゃいけないわけです。昔は家にいて、家のことやっていれば、社会的に認められたので、
ある意味楽だったんですが、今はそうはいかない。だから、今の女性は大変ですよね。
子育てと家事だけをやっていればいい
という時代ではなくなってしまった。そこにちゃんと自分を入れなきゃいけないわけですから、難しい時代ですね。
「子どものために」と「自分のため」を混同している母親たち
つまり、毎日毎日ちゃんと子供を見ていること、
すなわち、これが心をかけることであり、「手入れ」なんです。僕のいう「手入れ」とは、
子供が育っていくとき絶対に必要なことをちゃんとやるということです。いろいろな統計をみても、今の親は手を抜いているんじゃないか、
そう感じることが多いのです。
大体、朝ごはんを食べさせないお母さんはたくさんいるんだから。そういうお母さんに忙しくても朝ご飯を用意しなさいと言うと、
今度はコンビニで買ってきてたりしてね。こうしたことが大変だということがわかるけれども、
だからといってやらないのは、決して良いことではないと僕は思うしね。子供はなんとなくそれはわかるんですよね。
僕は、子供が反応するのはやっぱり母親。親とか大人がちゃんと自分たちを見てくれているという、
安心感を持たせる事だと思うのです。(引用103ページ)
そういえば、こんなドキッとする研究結果が発表されています。
教育意欲のデメリット
親の教育意欲が過剰だった場合、
教育意欲が全くない親に育てられた場合よりも、
子供の達成動機がむしろ低くなることが知られています
(参考文献:McCelland DC. Achieving society. New York, D.Van nostrand,1961.)
くわしくはこちらのコラムで。
忙しすぎる時代です。
手をかけれなくても、心をかければ、子は育つ。
というのは励ましのメッセージとなりますね。