思想の巨人が語る「ひきこもりの必要性」

思想の巨人といわれ2012年に他界した吉本隆明氏「ひきこもれ」を読んだ。
ひきこもりとまではいかないが、悶々とした青春時代を送ったことが誰しもあるんじゃないでしょうか。

特に今現在ひきこもりがちなお子様をおもちのご両親は切実だと思います。
そんな方へ特にお役にたてればと今回のコラムをアップいたします。

とくに感銘を受けた箇所を抜粋します。
名著ですので、ぜひお手に取り読んでみてください。

ご覧いただきありがとうございました。
ひきこもりは、大切なことを見つけるために必要なのかもしれませんね。
自分を探すとか言葉もあるし。

そして、子どもだけではなく私たち大人も時にはひきこもっていいかも
なんて思っちゃいました。それでは。

ひきこもっても、ひきこもらなくても
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時間をこま切れにされたら、人は何ものにもなることができない

 

世の中に出ることはいいことか
「ひきこもり」はよくない。ひきこもっている奴は、何とかして社会に引っ張り出したほうがいい。
-そうした考えに、ぼくは到底賛同することができません。
ぼくだったら「ひきこもり、いいじゃないか」と言います。
世の中に出張っていくことがそんなにいいこととは、どうしても思えない。

テレビなどでは「ひきこもりは問題だ」ということを前提として報道がなされています。
でもそれは、テレビのキャスターなど、メディアに従事する人たちが、自分たちの職業を基準に考えている面があるからではないでそうか。
かれらはとにかく出張っていってものを言う職業であり、引っこんでいては仕事になりません。

だからコミュニケーション能力のある社交的な人がよくて、そうでない奴は駄目なんだと無意識に決めつけてしまっている。
そして「ひきこもっている人は、将来職業につくのだって相当大変なはずだ。社会にとって役に立たない」と考えます。
でも、本当にそうでしょうか。ぼくは決してそうは思わない。

世の中の職業の大部分は、ひきこもって仕事をするものや、一度はひきこもって技術や職業を身につけないと一人前になれない種類のものです。
学者や物書き、芸術家だけではなく、職人さんや工場で働く人、設計をする人もそうですし、
事務作業をする人や他人にものを教える人だってそうでしょう。

ジャーナリズムに乗っかって大勢の前に出てくるような職業など、実はほとんどない。
テレビのキャスターのような仕事のほうが例外なのです。
いや、テレビのキャスターだって、皆が寝静まった頃に家で一人、早口言葉か何かを練習していたりするのではないでしょうか。
それをやらずに職業として成り立っていくはずがない。

家に一人でこもって誰とも顔を合わせずに長い時間を過ごす。
まわりからは一見無駄にみえるでしょうが、「分断されない、ひとまとまりの時間」をもつことが、
どんな職業にもかならず必要なのだとぼくは思います。

 

子どもは母親の胎内にいるときから生後一年くらいまでに、のちの人格形成につながる、
とても大きな影響を受けるというのがぼくの持論です。

この時期に、母親の気持ちが安定していなかったとしたら、
それは子どもにとってはとても大きな、存在をおびやかされるようなことです。

たとえば夫と諍いが絶えなかったとか、経済的な面でいつも心配があったとか、
姑とうまくいっていなかったとか、健康がすぐれなかったとか、そうした理由で母親が不幸な状態にあったとする。
そうすると、子どももまた、決して安心感を得ることができません。

なぜなら赤ん坊というのは、胎児期はまさに母親と一体ですし、乳児期も、
お乳をもらったりオムツを替えてもらったりと身近な人に世話をしてもらわないと生きていけません。

親が世界のすべてであり、親と自分はほぼイコールであるこの時期は、親の心の傷を、無意識のうちに自分の心の傷にしてしまう時期なのです。

 

母親だけが悪いわけではない

一歳まで安心感をもって育たなかった子どもというのは、その後、ずっと苦労をする。
それは、あまり他人に言えない苦労なのではないかと思います。

ただし、すべてを母親のせいにするわけではありません。
原因は母親が不幸であることなのですが、不幸のもとを作っているのは夫だったり家族だったり社会だったりするはずです。

ですから極端なことをいえば、いじめを始めとして、いま子どもたちに起こっているさまざまな問題を少しでも予防するには、
国がお金を出して、妊娠中から子どもが満一歳になるまで母親が安心して暮らせるように生活を保護するとか、
精神的な安定にチカラを貸すとか、そうするしか手がないのではないかとも思います。

その間、勤めを完全に休んでも給料がもらえるようにして、子どもが一歳になったらもとの仕事にちゃんと復帰できるようにする。
そのくらいのことをしないと駄目なのではないでしょうか。
とにかく、親の心が安定していないと、まともな子どもは育たないのです。

 

世界的な作家といわれるよりも

三島由紀夫さんについて
世界的な作家といわれ、社会的な地位や発言力をもつことよりも、
自分が接する家族と文句なしに円満に、気持ちよく生きられたら、
そのほうがはるかにいいことなのではないか。そんなふうにぼくは思うのです。

 

NHKラジオすっぴんで作家高橋源一郎さんが紹介いただいていました。ありがとうございました。